血だらけペガサス


学校では、朝礼のあとに集会があった。

イジメについてのお話だった。

お話の途中に、
知らない男子生徒がブツブツとひとり言を言っていたので、先生が注意した。


「青柳! 文句があるなら、前に立って、ここで言え」
すると、生徒は立ち上がった。

「僭越ながら、失礼します」


あ、今、青柳と呼ばれたこの男子生徒は
わたしと同じ価値観の人間だ。


わたしと同じ考え方をしていて
先生たちに文句があって、



立ち上がって、意見を述べようとした。


わたしは、心の中で彼の事を応援した。


その時だった。

一瞬、地面がゆらついた。
地震じゃない。


かといって、めまいでもない。

もっと悲惨ななにかがくる。


揺れる。




心が揺れ、そして大地が割れると思った。



「あ…………地震だ」



わたしは思わず叫んでしまった。


直後に大きな揺れがあった。
「大きいな」


と先生が言う。


でも、すぐに地震は落ち着いたから、
また先生の話は、再開する。




イジメについての話題から、まだ
先生は離れようとはしない。


たぶん。真理ちゃんのことだ。
真理ちゃんも、わたしと同じで価値観が違う人間である。


仲良し学級にいて、
今は、まだ学校には来ていないはずだ。



男子生徒たちが、虫の死骸を食べさせようとしたのだという。話は聞いていた。

だから、このあと、話しかけようと思った。



その時だった。


窓ガラスが割れた。

地震のせいではない。


もっと恐ろしい

なにかである。



わたしの意識が、
どんどん遠退いている。







まぶたが重くなって、





騒ぎ声が、遠くに聞こえる。







「ナンダ…………あれ」





「星だ」



男子生徒の声が聞こえた。





沈み行く意識のなかで、




わたしが目にしたのは、




窓から顔をのぞかせる



空に浮かんでいるのは



赤黒い、奇妙な惑星だった。


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