後輩営業は虎視眈々と先輩アシスタントを狙っている
「私・・・なんか焦ってたみたい。条件ばかり見て、自分だって幸せになれることを忘れてた。もう少しで、自分で自分を不幸にするところだった。それを気付かせてくれて、ありがとう。」

えって驚きの表情の田村君。

また、レアだわ。

こんな顔をさせたのが自分だってこと、すごいと思う!

こっちも笑顔になっちゃう。

でも、すぐにもとの爽やか営業スマイルに戻っちゃたのは、残念。

ふーと肩で大きく息をつく。

そして、ガサガサとバッグをあさり始める。

「まずは、あの人と別れなきゃね・・・。だからって、すぐに田村君と付き合うとかは・・・。」

「無理ですか?」

「・・・うん。」

「う~ん・・・じゃあ、それは美香さんの中で保留にしてくれていいです。でも、対外的には付き合っているって事にしてください。じゃないと、フリーなあなたを他の男に横から掻っ攫れそうで・・・ぼくが不安なんです。」

「田村君・・・心配ないよ。私、モテないし。」

私が呆れた調子で言うと、残念な子を見る目で私を見て、大きな溜め息を1つついた。

「ふーーー・・・。いいですか?あなたは、年下にモテるんですよ。」

はー?

そんなこと聞いたこと無い!

「毎年毎年、新入社員の部の説明の担当をするでしょ?その時期が終了する頃、揃いも揃ってみんな、あなたに思いを寄せているんです。気がつきませんでした?ぼくもそうですけど・・・。入社したばかりで、余裕の無いぼくたちにとっては、唯一の優しさを感じる人なんです。そして、あなたに彼氏が居る事を知って諦めていくんですけど。・・・理由はわかりましたね。彼女になってください!」

「はぃ・・・待って。1本電話させて。それから、返事したいの。」

その前にしなきゃいけないことがある。

今”はい”て言ったら、二股になる!

悪あがきなのは重々承知。

結構、フライングだけど、けじめを付けさせてほしい。




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