優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

 そんなことできないのに、二人でひまわりに隠れて泣いた。


 理不尽だって泣いた。離れたくないって泣いた。
 悲しいのに、苦しいのに、辛いのに、泣き疲れたころには真っ赤な鼻をお互い摘まみながら笑っていた。

 悪い本音は、ひまわり畑に隠してしまおうって。






「でもさあ」
 閉店の時間になって渋々植物園を出ていたら、優大くんは頭を掻く。
「実は次のバス、一時間後なんだよ。えーっと20時半だな」
「そう。バスがないなら仕方ないね」


 なんて、親が怒るのは分かっているけどもう怖くなかった。
 親が心配するようなことをした私が悪い。怒りは甘んじてお受けいたしましょう。


「バスが来るまで、次のバス停まで歩く?」
「お、いいね。バス代浮くじゃん」

本当に家出したり、逃げることはできない、我儘を叫んだら転校しないで済むわけはない。
色々と知ってしまった夏の始まり。
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