【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

「夕飯どうする? 食べられそうか?」
「はい! お昼ご飯食べたは食べたんですけど、なんか食べた実感がわかない食事で。お腹空いてるから、なんでも食べれそうです」
「なんだよ、それ。現金なやつだな」

そう言いながらヒョイッと伸びてきた真澄さんの左手が、わたしの頭をクシャッと撫でた。

真澄さんってよくわたしの頭を撫でるけど、癖なのかしら。

それとも、彼にとっては単なるスキンシップなのかもしれない。でもこんな仕草になかなか慣れていないわたしには、恥ずかしさを隠すように首を窄めるしかなかった。

「今晩も冷えるし、鍋にでもするか?」
「鍋? 良いですね。真澄さんは、何の鍋が好きなんですか?」
「そうだな。寄せ鍋か水炊きってとこだな。蘭子は?」
「わあ、偶然ですね。わたしも寄せ鍋と水炊きが大好物なんです。でも鍋って一人暮らしだと材料揃えたりが面倒だし、ひとりでお鍋つつくのも寂しくて」
「確かにな。でもこれからはふたりだ、寂しいのは解消される」

ふたり──

その言葉でも十分、わたしの心を温めてくれた。

真澄さんといると、なんか楽しい。

不意に湧いた感情に、温められた心が幸せで満たされていく。

もしかしたらこれが、乙葉さんが言っていた『生活を楽しむ』というやつなのかもしれない。

「じゃあ今晩は寄せ鍋にするか。足りない材料を買うから、スーパーに寄るぞ」
「はい」

まるで付き合っている恋人とのような会話に、わたしの心は軽やかに弾んだ。





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