【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「わたし以外の受付スタッフのことは名前で呼ぶのに、どうしてわたしのことは“高梨さん“って呼ぶんですか……」
なんだか急に照れくさくなって、真澄さんから目線を外す。彼と目を合わせて話すことにも少しは慣れたつもりでいたのに、昨日のことがあったからか、なぜかドキドキしてしまう。
「なんだ、そのことか」
うつむき加減のわたしの耳に届いた、真澄さんの優しい声に顔を上げる。
「気になってたのか?」
少し腰をかがめた真澄さんの顔が近づく。じっと見つめる彼の瞳がわたしの真意を伺っているようで、どう答えたらいいのか目があちらこちらへと泳いでしまった。
「ま、真澄さん、顔が近い……」
「大丈夫だ、まだ誰もいない。それにこのほうが、蘭子の表情がよく見える」
「それは、そうですけど」
確かにロビーには、まだ誰もいない。でもだからって、こんなに顔が近くては、心の奥底まで見透かされそうだ。
「で、どうなんだ。気になってたのか?」
再度同じ質問をされて、仕方なくコクンと頷いた。
別に他のスタッフのように“○○ちゃん”と呼ばれたかったわけじゃない。真澄さんが愛川先生のときのチャラ男仕様は苦手だし、興味が無いくらいに思われていたほうが都合もよかった。