【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
勢いよくリビングのドアを開け中に滑り込むと、ソファーに座って雑誌を読む愛川先生を見つけ、すかさず頭を下げた。

「こんな時間まで寝ていて、すみませんでした!」

今の自分は、ここに住まわせてもらっている居候の身。愛川先生は朝晩二食付きだと言っていたけれど、それを準備するのは自分の仕事。彼より早く起きるつもりでいたのに……。

一日目から、大失態だ。

肩を落としがっくりしていると、愛川先生の立ち上がった気配に顔を上げた。

「ヨダレ垂らして気持ちよさそうに寝てたから起こさなかった。気にしなくてもいい」
「えぇ、ヨダレ!?」

慌てて口元を拭う。と、愛川先生は笑いを堪えられなくなったかのように、ククッと笑いだした。

「ヨダレは冗談だ。まあ可愛い寝顔で、目の保養になったけどな」
「可愛い……目の保養……」

ということは、愛川先生に寝顔を見られたってことだよね? 目の保養って、わたしはどんな顔で寝ていたんだろう。頭がクラクラするんですけど……。

愛川先生はわたしの寝顔でも思い出しているのか、まだ笑っていている。

随分と楽しそうだこと……

愛川先生は大人で経験豊富。子供の私をからかって遊んでるつもりかもしれないが、こっちとしては面白くない。

情けないやら悔しいやらで、溜息が出てしまう。

「溜息ついた。そんなに溜息ばかりついてると幸せが逃げるぞ。あぁ、もしかして腹が減ったとか? 悪かった、気づかなくて。すぐ用意するから、蘭子はそこに座って待ってろ」

愛川先生はリビングの電気をつけると、キッチンへと駆け込んだ。



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