【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「そんな顔してましたか? でも大丈夫です。朝の挨拶をしてただけだから」

笑顔でそう答えたが、園枝は眉をひそめた。

「愛川先生は悪い人じゃないけど、女の子には見境ないところがあるから気をつけてよ」
「見境ないって、園枝さん。それはちょっと愛川先生がかわいそうじゃないですか?」
「何言ってるの! 用心に越したことはないのよ。何かあったら、すぐ私に言うのよ」

園枝さんは興奮気味にそう言うが、どのみち自分には関係のないことだと園枝に笑い返す。

私と愛川先生が……ないない。そんなこと、あるわけないよ。

だって現に愛川先生は、受付スタッフのことは“○○ちゃん”と名前で呼ぶのに、わたしのことだけは“高梨さん”と名字で呼ぶのだ。

それって暗に、私のことに興味が無いってことでしょ?

どうでもいいと思っているのに、溜息が漏れてしまう。

「おはようございます。では朝礼を始めたいと思います──」

園枝さんの呼びかけに顔を上げた。いつの間にか移動していたのか園枝さんがそばにいないことに気づき、身なりを整え彼女の前に並ぶ。園枝さんが集まったスタッフにさっと連絡事項を伝え終えると、最後に皆で指差し身だしなみチェックをした。

「受付での対応が病院のイメージを左右します。いつも言うようですが、丁寧に元気で朗らかに。これを肝に銘じて、頑張ってください」

園枝さんの定番の挨拶が終わると、総合受付の慌ただしい一日が始まった。




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