【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「お、おう、高梨さんか。今連絡しようと思っていたところだったんだよ」

いろいろ説明したいことがあるから一緒に来てくれと磐田さんに連れられ、警察が張ったキープアウトと書かれたロープの中へと入った。

でも角を曲がったところで、自分の目を疑った。

「あ、あれ?」

火事だと言うからてっきり建物は燃えカスになっていると思っていたのに、アパートは朝部屋を出たときと変わらない姿のままだったのだ。

どういうことなの?

意味がわからず小首をかしげていると、警察官が駆け寄ってきた。

「まだ現場検証は続きますが、住民の方が部屋に入るのはオッケーです」

磐田さんは警察官に「わかりました」と返事をしてから、わたしの方へと振り返る。

「燃えたのは一階の東さんとこのベランダと、その横にある倉庫なんだけどね。どうも放火らしくって」
「放火!?」

気づくのが早くて燃え広がることはなかったから、高梨さんの部屋は大丈夫だったよ──と言われたが、放火と聞いてはどうにも落ち着かない。

それでも他に行くところもないし、自由に使えるお金もない。不安だがここに住むしかないと階段を上がろうとして、磐田さんに呼び止められた。

「あ~ちょっと待って。この火事でガス管や電線が、どうやらダメになっちゃったみたいでね。一ヶ月くらいライフラインが使えなくなりそうなんだよねぇ」
「はあ!? それって、どういうことですか?」


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