片翼の蝶



✻


「受かった」


手を口元にあてて涙ぐむお母さん。


そして、この日のためにわざわざ仕事を休んだお父さん。


二人とも、大喜びだった。





あれから日が経って、
私はS大の文学部に晴れて合格した。


合格通知書が届いて、
私たち三人は喜びを分かち合った。


「ダブルでおめでとうってところね。
 本当に、よく頑張ったわね」


「まさか、茜にそんな才能があったなんて思わなかったよ。
 お父さん、感激だ」


「ありがとう。友達と約束あるから、また後でね」


私は両親と別れて、家を出た。


駅に向かうと、何人かではしゃいでいる女の子たちを見つけた。


貴子と、その取り巻きたちだった。


貴子は私に気付いて取り巻きに断りを入れると、
こちらに近付いてきた。


「茜!大学どうだった?」


「合格したよ」


「うそ?おめでとう!これで全員大学生だね」


「ありがとう」


貴子は嬉しそうに私の頭を撫でた。


二人で他愛無い話を少しして、
春休みに買い物に行く約束をして別れた。


私は電車に乗って、隣町まで急ぐ。


駅に着くと、見慣れた人が私を待っていた。


長髪を後ろで一つにまとめたひょろ長の男、
大志は私を見て、にやりと笑った。


「大学、その様子だと受かったんだな」


「うん。なんで分かったの?」


「なんとなく。お前、顔に出過ぎだからな」


「えっ、うそ!」


ははっと笑う大志を見て、私もつられて笑う。


大志はひとしきり笑うと、
真剣な顔になって、それから静かに微笑んだ。


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