片翼の蝶


✻

本を読むと、
必ずと言っていいほど夢を見る。


ほとんどが読んだ本の夢だけれど。


今日は片翼の蝶の夢だった。


私が梨花になって、
翔太のことを探している。


待って、置いていかないで。


私は、私はあなたに会いたいの―。









はっと目が覚めた。


薄暗い天井を見つめる。


ぽつぽつと出来ているシミの数を数えて、
しばらくぼうっとする。


鳥の鳴き声が聞こえた。


体をゆっくりと起こして立ち上がると、
カーテンを静かに開けた。


朝の光を浴びて大きく伸びをする。


長い髪を梳かして鏡を見ると、
珀が鏡を覗き込んでいた。


「ちょっと、びっくりさせないでよ」


〈おはよう、茜。いい夢は見られたか?〉


「まあね。あなたのおかげで
 面白い夢を見られたわ」


梨花との楽しかった日々を夢に見た。


夢の中の、本の中の珀はとても優しくて、
男らしくて、とても綺麗だった。


触れていると心の中がすっと澄んでいくよう。


もう一度、夢の中に身を投じたい思いを抑えて、
私は欠伸をかみ殺した。


〈それで、今日はどうするんだ?〉


「どうするって、あなたの頼みごとを
 解消しに行くのよ」


〈そうか、そうか!〉


珀は顔を綻ばせて喜んだ。


この屈託のない笑顔は初めて見たかもしれない。


いつも上から目線でにやりと笑うだけだったから、
こういう顔をされるとちょっと戸惑う。





私は服を着替えて部屋を出た。


リビングに行くと、
テーブルの上にメモ書きが置かれていた。


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