チャンスをもう一度
「陽翔の知り合いのお店?」
「ああ、うん、会社で一度使ってから
気にいって、よく通うようになったんだ。
料理も美味しいし、
さっきの人がオーナーだけど
オーナーも良い人で
居心地が良くて俺の癒しの場所なんだ。」
「そうなんだね。」
「望海、適当に頼んだけど良かった?
飲み物は、どうする?」
「うん。大丈夫。
ウーロン茶で。」
「わかった。」
と、言って
陽翔は、ウーロン茶を二つ頼んだ。

注文を終えると
掘りごたつの個室だったが
陽翔は、正座をして
「望海、
本当に沢山傷つけて、すまなかった。」
と、頭を下げた・・そして・・
「式典のときに、
理由があれば・・・
後から事情を話せば・・・
良いと思っていたのかと
望海のお母さんに言われ・・・
本当にバカな俺は、そう言われるまで
なにもわかってなくて。
おめでたいよな
気づいてもいなかったんだ・・・
自分がしでかしたことの重大さを・・
西園寺にも言われた。
本当に・・情けなくて・・情けなくて。」
と、頭をたれた。
「ごめんね。
母さん達から聞いた。
話したと思うけど、私の両親と凌の両親は
仲良しでずっと一緒なの。
だから、綾ちゃんも一緒に
三人で式典に行ったみたいで。
母さんは、酷いこと言ったのでは
と、気にしていたの。」
「いや、ひどいことじゃないよ。
本当の事だから。
そんなことを、
望海のお母さんに
言わせた事も情けなくて。」
「でも、陽翔のお母様もいたのでしょう。
ごめんなさい。
嫌な思いをしたと思うの。」
「嫌。母さんも全て俺の
責任だとわかっているから
問題ない。
俺が全部悪いんだ。」
と、話していると料理が
運ばれてきて
私達は、せっかく作って頂いた料理を
頂くことにした。

どれも美味しくて・・
会話もお互いの会社の話をしたり
陽翔とあっていない時期があった事すら
忘れてしまいそうだった。

ほとんど食べ尽くした頃に
陽翔は、
付き合っていた高校の時の話しや
付き合っているときの絢菜さんに
手を焼いていたこと
少しして家族で
絢菜さんがアメリカに
いったときの話し・・
そして帰国してからの式典までの話を
してくれた。

私は・・・
自分は、勝手に捨てられただけだと
思っていたから
驚きと衝撃、そして命の大切さを思い
涙が流れた。

心から絢菜さんが
生きていてくれたことに感謝した。

そして·····
式典からの話を聞いて·····
何をどうして良いのか
わから·····な····かった·····

私と勘違いして絢菜さんを抱き
子供····が··でき····結婚···したっ···と·····

望海は、
「絢菜さんが····生きていて····くれて
   ······本当に·····良かった······

話をしてくれてありがとう。

陽翔にとって私は
絢菜さんの変わりで
絢菜さんのいない間の繋ぎだと
思ってしまい····悲しかった·····

絢菜さんの身代わりなら
私に声をかけて欲しくなかったと
何度·····思ったことか
何度·····嘆いたことか
私はそんな辛い日々から逃げたくて
一日も早く陽翔の事は忘れて
やり直したいと······。

あっ、でもっ、
陽翔が絢菜さんと結婚して
子供さんも出来て幸せに暮らして
いて良かった。」
と、言った。

大丈夫·····っ··大丈夫······

 ····ちゃんと·····いえた······

  祝福の言葉も····言えた····と思う·····

私の言葉の後

  ······陽翔は、黙ってしまい····

もう·····帰ろう·····無理だっ·····

  まだ···やはり····辛い····

 ······私に····恋はっ·····無理····なんだ······

「····陽翔··今日はありがとう。
悪いけど、
私はこれで失礼させてもらうわ。」
と、言い席を経った。

テーブルに一万円を置いて・・

陽翔が、何かを言ったのか
何も言わなかったのか
定かではない。

お店を出るとき
ごちそうさまでした。
と、オーナーには言ったとおもう。

店を出て、足早に歩いた。

私の瞳からは······
  次々に涙が····溢れていた。
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