一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない


「でも、着替えとか私物を家の自室に残したままです」

「衣服や装飾品に関してはこちらで揃えてあります。王女としての生活に必要なものは全て用意してありますのでご安心を。他に何か必要なものがあるようなら、後ほど調達しましょう」

「い、いえでも、お気に入りのものは持ってきたいのですが……」


例えば友人やジョシュア、父からの贈り物。

城下町の雑貨屋で見つけた空の色に似たガラスペン。

数は多くないが、手元に置いておきたいものがある。

しかし、イアンの瞳はどこか厳しさの色を持ってメアリを見下ろしていた。


「メアリ王女、少々よろしいですか」

「あの、今まで通りに話していただけると助かります」

「それはご命令で?」


そんなつもりはなかったが、ただのお願いですと言えばイアンはメアリに堅苦しい口調で話し続けるだろうと思ったので背筋を伸ばし「そ、そうです!」と頷く。

するとイアンは特に渋るでもなく「では、メアリ」と以前の呼び方に戻った。


「君はもう町娘ではない。よって、相応しい格好と振る舞いを求められるんだ」

「それは、さきほども仰ってたことですよね」


必要な作法と教養を身につける為、メアリは明日よりレッスンに追われる。

美しい立ち振る舞いや言葉遣いやテーブルマナー、ダンスや乗馬のレッスンに、王女としての関わる政治の知識等、学ぶべきことは山ほどあるのだ。


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