とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。
せめて私のお弁当を止めたら、楽になるんじゃないかなって思う。
こんな温かいままお弁当を食べれるのは幸せだけど、負担にだけはなりたくない。
「そういえば、社長が私にもっと仕事を覚えてもらうかもしれないって言ってきたわ」
「え、なんでお兄ちゃん――じゃない社長が?」
「知らないけど、結婚したあんたが産休なり寿退職した後釜が欲しいんじゃない? 私だって玉の輿寿退社するのに! 酷いよね」
確かに。兄は、無理やり小春主宰の合コンに参加させられそうになって、小春の婚活パワーに圧倒されていたから、彼女の本気は知っているはず。
私ではなく、小春に事務の仕事を頼むということは、私はお兄ちゃんの秘書に戻るのか、はたまた新しい売買の仕事の方へ回るのか。
父は『さっさと退職しろ』と孫の名前は俺がつける、とか勝手なことを言っていた。
自分が手を広げたせいで私と兄がフォローしてるのに、と軽い殺意が湧いたけど、我慢したと言うのに。
親というものは勝手なものだ。
それに事務は、忙しいけど体制さえ整ってくれたら仕事も落ち着くし、今も定時に帰れるぐらいには良い部署だ。別に辞めるほどではない。
結婚しても当然、辞めるつもりはなかったけど、辞めてあの家を片づけるのに手を回したら彼の負担が減るのだろうか。
お弁当の中身は全て無くなったが、私の悩みは全く減ってはくれなかった。