総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)


《Side.幻》


そのノックが

オッサンじゃないことは、わかった。


さっき眠ると言って別れたから。


オッサンは一度寝ればしばらく起こしても起きやしねえ。


「……誰だ」


ここに俺が住んでいることは誰でも調べがつく。


来ようと思えば幾らでも来られる。


ただし

命を捨てる覚悟をした者だけがな。


――ガチャ。


ゆっくりと扉をあけると、

煩いくらいの雨音と

目に見えそうなくらいの強風が吹き付ける。


そこに、立っていたのは――。


「わかる?」


全身ずぶ濡れの、少女だった。

極限まで脱色された金髪。

見覚えのある、制服。


「……霞(かすみ)、なのか」

「久しぶり」


あの日、忽然と俺の前から姿を消した


いや


俺が、遠ざけた女だった。


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