総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)


「幻、さん」

「俺を信じろ」

「……っ」

「幻さん」

「ああ。どうした、夕烏」

「強く、抱きしめて欲しいです」


いつも、宝物を守るみたいにそっと包み込んでくれるあなたに。

今は痛いくらいに抱きしめられたい。


「……お願い、します」


わたしの言葉で幻さんの腕に力がこめられる。


「もっと」

「よせ。……壊してしまいそうだ」

「壊して欲しいです」

「!」


これまでの、わたしなんて。

壊れてしまえばいい。


「夕烏」


わたしから少しだけ身を離す幻さんに、顎を持ち上げられる。


――目と目が合った。


「夕烏」

「……幻さん」

「横になるか」

「…………」

「話ができるようになるまで。横になってるか」

「幻さんは?」

「隣にいる」

「…………」

「寝床まで運んでやろう」


そう言うと、わたしを、あっという間にお姫様抱っこしてしまった。


「……軽くなったんじゃないか」

「幻さんにはお手上げです。なんでもわかっちゃうんですね」

「ヨーグルトとゼリー、買ってきた。冷蔵庫に冷やしてある。食えそうなら持ってきてやるが」


お見舞いの品まで。用意してくれてたんですか。


「パピコは買いました?」

「忘れたな」

「大好物なんですよね……?」

「はは。夕烏のことばかり考えていたからだな」

< 58 / 271 >

この作品をシェア

pagetop