【短編】井上さんの毛先が今日も


触れたい、、、


頭の中そればっか。


どれくらい柔らかいんだろうか、どれくらいサラサラなんだろうか。


休み時間、彼女が女友達と肩を組んでるのを見るたびに。


あーいいなーなんて。


気持ち悪いのは十分わかっている。


髪、縛らないのかな、ほら、ポニーテールとか。


いや、井上さんのうなじを他のやつらも見るのかと思うと寒気がする。ほんと無理。やっぱりダメだ。


「井上さんの髪いいよな〜、ああいう緩いパーマみたいな癖っ毛めっちゃタイプ」


黙れ。


移動教室で廊下を歩いていると、つるんでいるグループの1人がそう言った。


大人しくて他の人に比べたら制服もきちんと着ているいわゆる地味めな子だから、誰も気になっていないと思ったのに。


「川澄は?クラスで一番いいなって思うやつ」


「どーでもいい」


「はー?」


ノリ悪〜なんて騒ぎながら、今度は、誰の胸が一番大きいか、なんて話になる。

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