癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
光琉は小さいときから遙季を守ることが自分の役割だと思っていた。

高校生になり、身長が伸びてイケメンと呼ばれるようになっても、光琉にとっては自分の評価は何ら変わりない。

だから、突然、女子生徒にモテるようになっても全く相手にしなかった。

光琉の周囲に対する態度も、中学生の頃と大きく変えた訳ではない。

ということは、今、評価されているのは光琉の表面的な魅力だけだということ。

ブレない光琉は、女子生徒の甘い誘惑にものらず、ただひたすらに隣に住む遙季にだけ関心を向けていた。

小学校では在校期間が3年間かぶったが、中学も高校も1年間しかかぶらない。

光琉にとって、遙季と一緒に過ごせる学校生活は、登下校の時間を含めてとても貴重な時間だった。

遙季といることが当たり前になっていた光琉は、中学、高校ともに部活には入らず、毎晩、遙季の受験勉強や宿題の面倒をみていた。

そんな光琉が高校2年生、遙季が中学3年生の時、

受験勉強を教えている合間に、うたた寝をした遙季が可愛くて思わずキスをしたことがある。

その時からだ。

遙季を幼なじみとしてではなく、一人の女として扱うようになったのは。

驚いて目を覚ました遙季も、照れながらも拒否はしなかった。

しかし、受験生である遙季のことを思いやり、キス以上のことは我慢して、遙季の受験を乗り切った。

だか、そこは、正常な欲望に悩まされる男子高校生の光琉だ。

遙季が無事に高校合格したその日、ついに理性のたかが外れた。

遙季の家で二人きりでお祝いをしたその日、

キスまでにとどめることが出来なくなった光琉は、なしくずし的に遙季のハジメテを奪った。

゛遙季と全てを共有したい゛

言葉はなくても、二人にはそれ以上の信頼関係がある。

だからこそ何があっても二人の関係は壊れない、と、光琉は信じていた。

゛遙季の誕生日が来たら俺から告白しよう゛

その時は、そんな悠長なことを考えていた。

そう、光琉は浮かれていたのである。

思春期特有の女生徒のやっかみが、光琉の想像以上に脅威的なものになることもあるということに気づけないほどに,,,。

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