癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
遙季がトイレから戻ってくると、両家の両親は既に出来上がっていた。

「やあ、めでたいね。結婚式は来月だっていうし、オーストラリアは秋だから洋服片付けないで置いとかないと」

何気ない直樹の言葉に

「け、結婚式って何のことよ」

と遙季が慌てる。

「えーっ?あんたたちの結婚式に決まってるでしょ。光琉くんが全部段取りしてくれたのよ。感謝しなさい」

「た、頼んでないし。了承してない」

「あらぁ、遙季を落とせれば、結婚してもいいって私達が許可してたのよ。休みもお金も、無駄にならなくて良かったね。光琉くん」

婚姻届を持ったまま、遙季を追い詰めながらも

「ええ、自信はありましたから」

と、光琉は余裕をかましている。

「休み取ってないし、パスポートもない!」

「大丈夫。鈴村先生も結婚式に招待してるし、パスポートは私が用意しといたから。ほら見て、じゃーん!」

祐子はパスポートの見開きのページを見せて、それが遙季のものであることを示して得意気になっている。

「まさか、だけど,,,鈴村先生までグル?」

「当たり前でしょー。あんたが住んでたあのシェアハウス的な下宿?あそこの管理人夫婦は、鈴村先生の叔母さん夫婦よ。気づいてなかったの」

「知るかー!」

もう、何を聞いても驚かないと思っていたが、管理人さん達まで巻き込んでいたとは呆れてものが言えない。

「これって,,,やめられないパティーン?」

「悠生くんと梨々香ちゃんも結婚式には呼んでるからねー」

「??!!」

壁際に追い込まれた遙季は、光琉に壁ドンされた状態で、婚姻届を突きつけられる姿勢になった。

「わ、わかったわよ」

こうして、遙季は婚姻届にサインせざるをえない状況を強要されたのである。
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