癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
スマホを見ても、光琉からの着信はない。

いつもなら

「暗い道を1人で帰るなんて絶対に許さない」

と、言うほど過保護な光琉なのに珍しい。

遙季は荷物を片付け、バッグを持って帰宅することにした。

学校から駅までの道のりは少し暗い。

遙季は、初めてこの道を1人で通っていた。

後300m程で駅の改札に着く、というその時、

遙季は男子生徒によって、ビルの間の路地裏に引きずり込まれた。

銀色に光るバタフライナイフと男子生徒の金髪の色。

ニヤケた口元から覗く歯は、シンナーのせいか、黒く溶けている。

「な、何か御用ですか?」

「あんたに頼みたいことがあってさ」

その男子生徒は毅と名乗った。

「この辺、俺たちのシマなんだけどさ。あんたと八代がイチャイチャ登下校されると目障りだって苦情がでてんだよね」

「い、イチャイチャなんてしてません。私達は幼なじみだし」

「幼なじみだろうと何だろうと関係ねえ。目障りなんだよ」

毅はバタフライナイフを遙季の首元にあてて笑った。

「あんなやつとは別れて、俺と仲良くしようぜ?ものは悪くないからな」

そう言って、不躾に遙季の全身を舐めるように見た。

足がすくんで動けない。



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