【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「タイミング悪すぎるな。ゴメン、電話出るね」

少しイラっとした神永さんを可愛いなんていうとダメだろうか。

不機嫌なままで通話を終えた神永さんは「はぁ」とため息をつくと、いきなりわたしを抱きしめてきた。

「な、何かあったんですか?」

「ん? 今からニューヨークに行く。実は君に会うために一日出発を遅らせたから、ぜったい今日の夜の便には乗らなくちゃいけない」

「えっ! ゆっくりしていて大丈夫なんですか?」

驚いたわたしは時計を見たけれど、ニューヨーク便の出発時間なんか知らなかった。

「と、とにかく、もう行かないといけないんですよね?」

「ん~そうだな」

慌てるわたしはその場に立ってあたふたしているのに、当の本人である神永さんはそんなわたしを見てのんびりしている。

やっと立ち上がったかと思うと、わたしの手を引いて抱きしめてきた。

「ちょっと、こんな暇――」

「一緒に来る?」

耳元でささやかれて、なんとも色気のある声にぞくっとした。なんとも心臓に悪い声だ。
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