家庭訪問は恋の始まり
好き。

私も瀬崎さんが好き。

口にできない想いが、胸いっぱいになり、思わず口からこぼれそうになる。

私は、ほんのかけらほど残った理性を総動員して、想いが溢れないように心に蓋をする。

でも…
このまま流されてしまえたら…

己の揺れ動く想いに翻弄されながら、瀬崎さんのくちづけを受け入れる。

今、この瞬間が幸せだと思う。


やがて、瀬崎さんの温もりが離れていく。

「名残り惜しいけど、嘉人が待ってるから
帰るよ。
また、機会を見つけて、必ず会いに来るから、
待ってて。」

私はこくんと頷く。

「じゃ、またね。」

そう言って、瀬崎さんは帰っていった。



瀬崎さん…

今、見送った彼に会いたいと思うなんて、私は変だ。

だけど、会いたい。

お風呂に入っても、お布団に入っても、頭に浮かぶのは、瀬崎さんの事ばかり。


武先生の告白に断りの返事をしていない事に気付いたのは、週が明けた月曜日の事だった。
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