家庭訪問は恋の始まり
自分が悪い訳じゃないのに、また申し訳なさそうに話す夕凪先生。

そんな夕凪先生を笑わせたくて、俺は軽口をたたく。

くすくす笑う夕凪先生は、とても愛らしい。

年の頃は妻とほとんど変わらないのに、怒ってばかりの妻とは全然違う。

いや、あいつをあんな風にしたのは、俺か。

俺とじゃなければ、あいつもこんな風に笑えるのかもしれない。


俺は、診断書を預けて、学校を後にする。

帰宅後、俺はお風呂上がりの嘉人を呼ぶ。

夕凪先生の言う通り、左のこめかみにあざがあった。

「嘉人、これ、どうした?」

嘉人は即座に母親の顔色を伺う。

俺は、妻を呼んだ。

「嘉人のこれ、どうした?」

「さぁ? どこかにぶつけたんじゃない?」

妻は目を逸らして答える。

「嘉人、本当の事を言え。
このあざ、どうした?」

嘉人は、やっぱり母親を見て、口ごもる。

言えないほど、母親が怖いのか。

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