エリート社員の一途な幼なじみに告白されました

 結局今朝、出社して偶然環と目が合った時、また胸の奥がぎゅうと苦しくなってすぐに目を逸らしてしまった。

 自分の気持ちと向き合うのが怖くて、環から来た事務的な仕事のメールに事務的に返信して、なるべく仕事に集中しようとした。

 でも、仕事が全然、手につかなかった。やらなきゃらないことは山ほどあるのに。

「せ、先輩?」
 桃子ちゃんが手を目の前に振ってハッと我に返る。
「全然いつも通りじゃないですよ」

「そ、そうかも。休日に撮りためたドラマ夜通しで見てたから寝不足なのかも」
 眠そうに欠伸をしてみせると、桃子ちゃんはくすっと笑って、自分のデスクに向き直り、卵焼きを箸でつまんで食べた。そして、嬉しそうな声色で、
「実は、歓迎会と忘年会の手配、私が任されちゃったんです」
 と言った。

「あ、もう桃子ちゃんもそんな年数になったんだ」

 忘年会の手配は、持ち回りで営業事務が会場を手配することになっていて、大体は入社して二、三年位の社員が任される。営業事務一人だと大変なので、営業とタッグを組んで色々と決める。ここで恋愛関係に発展して結婚するケースも意外に多い。

「誰と一緒にやるの?」
「佐々木さんです。さっき話をしたんですけど、佐々木さん自体は正直ちょっと頼りない感じです」
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