エリート社員の一途な幼なじみに告白されました
#15 波乱の歓迎会と忘年会

まさかの同席!?


 定時退社の時間が過ぎ、歓迎会と忘年会の時間が近づいてきた。

 私は環から指示された郵便物を郵便局へ出すために定時退社時間後すぐに会社を出て、直接会場へと向かった。会場へ着くと、店の入り口で桃子ちゃんが割り箸を持った缶を持って立っていた。

「先輩、お疲れ様です。席はくじ引き方式になっているので、ここからくじを引いてくださいね」
 そう言って桃子ちゃんは笑顔で缶を差し出した。

 貸し切り状態の店は、8つのテーブルが並べられ、一つのテーブルには5つの席が設けられていた。

 テーブルの中央にはA、B、Cなどとアルファベットが書かれたペーパーアイテムが立てられている。

 辺りを見回すと、先に来ていた何人かの営業の人や営業事務の子達がそれぞれテーブルに散って雑談をしているようだった。

 主役である環と一番偉い城崎部長、進行役である幹事は同じテーブルになっているのか、「A」と書かれた一番前のテーブルに座っている。

 佐々木さんは、緊張気味に何かの紙に目を通し、環と部長は二人で話をしていた。
 
 この感じだと、Aの席は残り一席。

 ――今は環とのことがあって気まずいから、どうか違う席になりますように。

 恐る恐るくじ引きをひき、棒の下の方へ目線を落とす。

「あっ、先輩、Aの席じゃないですか! 先輩と同じテーブルだと色々心強いです。よろしくお願いします」
 桃子ちゃんが笑顔で頭をさげた。

 ……ああ、よりによってAの席を引いてしまった。とほほ、気まずすぎる。

 重い足取りでAのテーブルへ向かうと、私の存在に気付いた城崎部長と環が私を見上げた。

「あ、あの。A席です。よろしくお願いいたします」
 私がそう言うと、城崎部長はリラックスした表情で、
「ああ、森本さん。お疲れ様」
 と声をかけてくれた。

 一方の環は一瞬動揺した表情で私を見上げ、眼鏡のブリッジを押し上げて、「お疲れ様です」とだけ言った。

 紙を読むことに集中していた佐々木さんは顔を上げ、少しおどおどした様子で、
「お、お疲れ様です。席は、倉持さんの向かいの席です」
 と案内してくれた。

 よりによって環の真向かいなんて、余計に気まずい……!
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