仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
神楽の屋敷を出て一時間後。
午前九時三十分に、実家に到着した。

公立の中学校近くの家は、一階が店舗と駐車場。二階が家族の生活空間になっている。

店舗はシャッターが閉まり、休業の張り紙が貼られていた。

建物の脇の階段を登り、二階に上がると玄関がある。
結婚する時に合鍵は返していたから、インターフォンを鳴らすと、しばらくしてから継母の恵美子が扉を開いた。

「ああ、美琴ちゃん来てくれたのね、ごめんね頼っちゃって」

継母はとても申し訳なさそうな顔をして言う。

父の後妻の彼女は、美琴と十歳しか歳が離れてなく、まだ三十四歳だ。
それなのに、顔色は悪く疲れ切った印象で、実年齢より十は上に見えた。

(恵美子さん、疲れてるんだわ)

父はリハビリ病棟に入院中のため頼れない。子供達は一番上の弟が九歳とまだまだ目が離せない時期。
仕事をして、子育てをしてでは、気が休まる暇が無いのだろう。

痛ましい気持ちになりながら、それを隠して笑顔を見せる。

「大丈夫、気にしないで。陸たちは寝込んでるの?」

靴を脱いで上がりながら聞くと、恵美子は沈んだ表情で頷いた。
< 46 / 341 >

この作品をシェア

pagetop