月明かりの下の舞踏会


玄関の前の鏡でおかしな所はないか確認して、籠を腕に掛けて扉を開ける。

大人も子供も楽しそうに家の前で、この祭りを楽しんでいる姿を見つめ小さく笑う。

あまり大きな町ではないけれど、皆が仲がいいのがこの町のいい所だ。

家の前に置かれたかぼちゃも今年はいい出来に仕上がっているし、気合十分だ。


「スーザン!」


どこからか私ーースーザン・アイルを呼ぶ声が聞こえ、辺りを見渡した。

すると子供達に囲まれながら歩いてくるこの町の町長、タイラックさんだった。

今年は海賊の仮装にしたらしく、巻髭が見事にくるりんと巻かれていた。


「タイラックさん、こんばんは」


「いい夜になりそうだな」


「はい、今年も賑やかになりそうですね」


そう言って笑っていると、子供達が私のエプロンを掴んでキラキラした瞳で見つめてきた。


「トリックオアトリート!」


子供達が順にそう言い始め、準備していたクッキーを手渡すと喜んで駆けていく。




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