それから、10日ほど経ち、俺は、栗原の母親である伊藤課長を会議室に呼んだ。

「伊藤は、栗原がなんで仁を振ったのか
知ってるか?」

「ううん。
北海道に断りに行ったとは言ってたけど。
でも、ほんとに絆が振ったの?
だって、絆、仁くんが好きなのよ?」

はぁ…
揃いも揃って…

「栗原は、親に言えないトラウマを抱えてる。」

「え!?」

「あいつは、遠距離恋愛だけは、したくない
らしい。」

「それって…」

「お前らが原因だよ。
親が遠距離で別れたから、遠距離だとうまく
いかないと思い込んでる。」

伊藤の顔が見る見る強張っていく。

「仁には俺から話した。
遠距離が不安なら、仁となら遠距離を
乗り越えられると思わせてやれ、
と言ってある。
あとは、栗原次第だ。
親として、伊藤から話してやって
くれないか。」

伊藤は、黙って頷いた。

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