空色物語
貴方色


私の心はずっと
黒に近い灰色だった

人を信じられなくて
一人でいるのが疲れ
なくて
独りでいるのが
苦痛じゃなくて

なのに 確かに
少しずつ 心に
色をつけたんだ

貴方の “女房は元気しゆう?”

“部屋は空いちゅうよ”
“ホンマ そやな~”

何度か言葉を
交わす度に
何度か聞く度に
暖かい色が心に
宿ったんだ

約束したよね
春には 桜の木の下で
アタシは微睡み
貴方の腕枕

夏の夜は 海辺の
砂浜に寝転がり
満天の星空を眺める

目を閉じれば
浮かぶ
貴方との交わした
幾つもの約束

あなたが
“必ず 元気になって
君の元に戻るから”

そう言ったのは
確かな約束だから

貴方が旅立った今も
私の心は貴方色に
染まったまま

色褪せることなく
貴方の こだわりも
私の中で
生き続け 今では
身に染み付いてる

誰かの色に
染まるなら
貴方の色に
染まったままでいい

これ以上ない程
似た者同士だから
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