愛のない部屋

「私のこと嫌いになったの?」


車の中で別れ話をされて突然のことに頭がついていかなかった。


あまりにも幸せすぎて、先生の気持ちが離れていたことに気付けなかった。


「ごめん、」



別れる理由すら、教えてもらえなかった。



ただただ悲しそうな顔で何度も何度も謝られた。



「嫌いでも良いから、傍にいてよ」



もう離れたくないとワガママを言う。
先生がいなくなったら、また私はひとりぼっちなのだ。



「だから嫌なんだ。15歳も年下のガキは、面倒くさくて仕方がない」



投げやりな口調に、目の前が真っ暗になった。



「先生……」


「生徒と秘密の恋、よくドラマとかであるじゃん?どんなものなのかと……」


先生の言葉を最後まで聞くことなく、車を飛び出した。


恋は盲目なんて言うけれど、私は先生の悪いところを最後までひとつも見つけられなかった。


甘い夏の余韻に上乗せされた、

ひどい言葉。



15という年の差は、
あまりにも大きかったようだ。


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