愛のない部屋

聞いて良かった。


「俺も勇気を出して、綾瀬に気持ちを伝える。だからおまえも、峰岸とちゃんと向き合え」


「篠崎さん…」


「返事は?」


まだ迷っている私を睨む篠崎さんは、怖いくらい真顔だった。


「おまえたちの幸せを誰よりも願ってるんだ。お願いだから素直になって、アイツを受け止めてやってくれ」


「…は、い……」


迫力に負けたように、篠崎の押しに誘導されたように、私は返事をした。


それと同時に決心する。

峰岸と向き合おうと篠崎に誓った。



「よし。さ、午後も頑張るぞ!」



相変わらずの切り替えの早さでニヤリと笑うと、篠崎は歩き出した。私もヒールの音を響かせて、その後を追う。



他の恋に向かう。
だから俺のことを気にしないで。
またそう、篠崎に気遣われた。

無遠慮のように見えて、その言動は常に相手のことを考えている。

そんないい人とお別れしてまで選んだ男と、逃げずに向き合わないとね。




――今夜、峰岸に電話をしてみよう。



アイツはきっと私の想いを受け止めてくれる。


だから素直になって、一歩踏み出そう。


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