世界で一番似ている赤色

2






「綾ちゃん、帰ろ」


「あれ。川瀬くん、部活は?」


「今日月曜だよ。俺、部活休みの日」


「あ、そっか。ごめんごめん」



やっと肩までつくかつかないかまで伸びた髪をいじり、川瀬くんに苦笑いを浮かべた。


川瀬くんもまた頭をかき、軽くため息をついた。



危ない、またやっちゃうとこだった。



川瀬くんと付き合って1ヶ月。


彼の部活が休みである月曜は、週に1回の放課後デートをする約束だ。



先週、間違えて放課後すぐ帰ってしまい、彼を悲しませてしまった。


川瀬くんにとっては、月曜があるから部活苦しくても頑張れる! というくらい楽しみな日らしいのに。



コンビニに寄ってから、川沿いの公園へ。


短い緑が生い茂る土手に、体1つ分の距離をあけて座る。


ここで日が暮れるまでお話しすることが定番になっていた。



「今度、休みの日どっか行こうよ」


「いいよ。どこがいい?」


「綾ちゃんは?」


「んーどこでもいいよ。川瀬くんは行きたいとこある?」



スティックタイプのチーズケーキの袋を開けながら、彼にそう聞く。



今日はずっと太陽が雲に隠れている。


景色は色を変えないまま暗くなるだけだろう。



わたしはチーズケーキをかじり、輝きの少ない川を眺め、彼からの言葉を待った。



「思い切って夢の国とか行っちゃう?」



川瀬くんはそう言い、軽くうねった髪を風になびかせ、わたしを見つめた。


ぽろりとケーキのかけらがスカートに落ちた。

< 110 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop