桜恋色
改めて口出されるほど現実味を帯びる。



しゃくりあげるほど泣いたのなんて何時以来だろう……。



椎名くんの学ランを握り締めながら、わたしはむせび泣いた。



「俺、肘を手術することにしましたっ」



椎名くんの言葉で顔を上げたら、



制服の裾で涙を拭ってくれる。



「ホントは前から言われてたけど……怖かったんです。手術」



情けないでしょ?




って、困ったように笑う椎名くんに精一杯首を左右に振って否定した。



「情けないついでに……お願いさせてください」



真剣な表情に戻った椎名くんが、こう言ってそっと顔を寄せてくる。




息がかかるほど近くなったところで、



「もう会いに来たりしません。……だから、俺に勇気くださいっ」



椎名くんの瞳がゆっくりと閉じられる。



そこにちょっと背伸びをして、




唇に触れた。





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