朝マヅメの語らい
■2

 翌朝。橋爪は念のため早めに出社したが、坂巻は言いつけを守って、すでに会議室に行っているようだった。デスクの脇にその痕跡がある。昨日の晩にはなかった、飲みかけのペットボトルだ。

(よしよし)

 唇の端が自然と上がる。橋爪は持ち手が千切れそうなほどへたった鞄を自席に下ろし、PCの電源を入れた。

コンビニで買ってきた菓子パンに噛り付きながら、気分良くショッピングサイトを開く。『エギング ロッド セット』の検索で、モニターにずらりとつり道具が表示された。

 今はちょうどアオリイカ釣りのシーズンだ。生まれたばかりでまだ警戒心の薄い子イカは、初心者にはちょうどいい。

橋爪は週末、釣果の上がる朝マヅメの時間帯を狙って荒崎あたりの堤防に行く計画を立てていた。これまで長らく、万能ロッドを使い回してきたが、これを機に専用のものを揃え始めるつもりだ。
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