君と二人の201号室





朝ごはんも食べ終わり、少し食休みも兼ねての洗い物をしていると、拓海さんは甘えてくる。



「ちょ、拓海さん…今は…その……ちょっと邪魔、です」

「ん~?だってこれから、お母さんに会うかもしれないんでしょ?元気チャージだよ、菜帆の」

「…ありがとうございます」



私が洗い物をしている後ろから、抱きついてくる拓海さん。

自分で元気チャージとか、ちょっと自意識過剰じゃないかな…なんて思ったけど、でも本当のことだから、わかってくれてるみたいで嬉しくなった。

元気がなかったとは、自分でも少し思った。

うん、元気出た。


…なんだかなぁ。

今からお母さんに会うかもしれないのに、緊張感がまるでない。

まぁ、緊張する必要もほんとはないけど。



「…じゃあ、菜帆。とりあえず今日どうする?買い物でも行く?」

「そうします。いつくるかわからないし、こっちから連絡取りようがないし」

「ふっふっふ…菜帆にいっぱい貢ぐからね~」

「いいです、やめてください」



恐ろしいことをサラッと言う拓海さん。

…危なかった…。本当にやりかねないからものすごい恐怖だ。

そのうち、あからさまな無駄遣いをいっぱいしそう。



「…そうは言っても菜帆、春物の服とか持ってないでしょ?それは買おうよ」

「え、別にジャージでいいですよ?」

「オシャレして着飾った、さらに可愛い菜帆を俺が見たいから買うの。俺の買い物。でも、着るのは菜帆だから菜帆もついてきて」



拓海さんはやっぱり、口が上手いんだと思う。

そんなこと言われたら、行かないわけにはいかない……とも思ったけど、やっぱりダメだ。このままじゃ。



「…あんなオシャレとこ、私には似合わないし…。それに、服を買いに行く服がないです」



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