君と二人の201号室


「すみませーん、注文いいですか?」

「あ、はーい!」



うぅ…拓海さんがお客さんって、なんか緊張するなぁ…。

いや、それでも仕事だもん。ちゃんとやらなきゃ。



「ご注文をお伺いいたします」

「ホットコーヒー1つと、可愛い店員さんをお願いします」



…『可愛い店員さん』……?

……うん、よくわからないからスルーしよう。



「ホットコーヒー1つですね。かしこまりました。少々お待ちください」



私はお決まりの言葉を言うと、店の奥へと入った。



「ホットコーヒー1つ、です」

「…なんかさっき、別のことも言われてなかった?」

「それはスルーしました」

「…なんかお疲れ様」



店長、若干哀れんだ目で見ないでください。

お気遣いは嬉しいけど。


私と店長が話していると…痛い。視線が痛い。

…もしかしなくても、拓海さん…だよね?


…帰ったら私、何言われるんだろう。

いや、言われるならマシか…。

………何されるんだろう。


…考えてもキリがなさそうだから、考えるのやめよう。うん、そうしよう。

…って、これからも悩むのかな、私。


…でも、それが嫌じゃないって思うのは

――なんでだろう。


…拓海さんの術か何かにハマっている、とか…?


会ったばかりの人にそう思うのは――おかしいのかもしれないけど。

明日も明後日も一緒にいたいです、拓海さん。



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