君と二人の201号室


「…不安にさせるかもしれないけど、」

「…はい」

「大事にしてあげな、彼。人間、いついなくなるかわからないから」

「…!」



どこかの誰かも、きっと同じような言葉を言うかもしれない。

だけど、あんな顔の店長と、さっきの話を聞いたら。



「…もちろんです」



その言葉が、店長だから言えるものなんだと思い、私は力強く頷いた。



「にしても、大繁盛だな~。やっぱ、クリスマスメニュー考えた効果か?」

「そうかもしれないですね」



そうなのだ。

実は、今日と明日の二日間限定メニューを考案した。私が。

本当は、クリスマスあんまり関係ないけど、『限定』という言葉に弱い人は多い。そこを狙った。

メニューも、家族連れに喜ばれそうなもの、キャピキャピした女の子たちに喜ばれそうな、見た目が綺麗なもの…の、二種類を準備した。死角はない。



「菜帆ちゃん。口元。緩んでるよ」

「え?…すみません……」

「いや、大丈夫。…菜帆ちゃんって結構、職人タイプだよね…。多分、自分で考えたメニューのこと考えて、改めて満足してたんでしょ」

「!?…なんでわかったんですか!?」

「上司の勘」



上司の勘、恐ろしいです。…というか恐れ入りました。


…だって、満足なものができたし、予想通り順調に売れてるんだもん。

嬉しくないわけがない。

しかも、評判も結構いいし。普通のメニューに追加するわけにはいかないけど、毎年クリスマスに出すのもいいかもしれない。あとで、店長に提案してみよう。


…ここで働いてて、お客さんが美味しそうに食べてくれるのは嬉しいしありがたいんだけど、見てるとお腹空いてくるからなぁ。拓海さんに、迎えの時何か持って来てもらうように頼んでおこうかな…。



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