君の見る空は青くない。

 


 *side水夏理*゚.*




「おはよう、叶くん。」 
 

 「…ん。」

 
 いつも通りの朝、今日も叶くんが迎えに来てくれている。

 
 「今日も眠そうだね。」


 「…ん。めっちゃねみぃ。」

 
 叶くんは朝が苦手なのに、私のために、早起きして時間を合わせてくれているんだ。


 「寝癖ついてるよ。」  


 「んー。直して。」

 


 朝の叶くんは、甘えん坊でちょっと可愛い。


 「しょうがないなぁ。」

 
 こうやって世話を焼くってことは、私は多分、叶くんが好きなんだと思う。


 「はい。直ったよ。」


 「ありがとう。」



 -キュン。



 多分じゃなくて、すごくかも…。


 何回か告白しようかなって思ったんだ。


 けど、障害を持っている私には、叶くんを幸せにすることができないから。


 こうやって側にいるだけでいいんだ。


 「どうした?俺の顔、なんかついてる?」


 「ううん、なんでもないよ。」


 こうやって、たわいのない話をしてるだけで…。







 「おはよう、水夏理!」


 「ゆっ優花ちゃん!?」


 ばっ、と後ろから抱き着かれて、びっくりする。


 藤森 優花(ふじもり ゆか)ちゃんは数少ない私の貴重な友達なんだ。


 「今日も可愛いなぁ、水夏理は。」


 「ふふふ、ありがとう、優花ちゃん。」


 優花ちゃんは趣味が合うから、すぐに仲良くなったんだ。


 私には友達が少ないから、叶くんと優花ちゃんといることがすごく多い。


 「優花ちゃんも可愛いよ。」
 

 「ありがと。」


 優花ちゃんは、美人で、すらっと高い身長が素敵な可愛い女の子なんだ。

  
 短めな髪は、いつも可愛いピンで止められている。

 
 運動ができて頼りになるから、男子にもひそかに人気があるらしい。


 


 「水夏理、次、調理実習だから行こう!」


 「うん。」
 

 次は調理実習。 


 調理実習みたいに、移動教室のときは、叶くんは必ずついて来てくれるんだ。


 「ねぇ、ほんとにあんた達付き合ってないんだよね…?」


 「へっ…?」

 
 私が叶くんのことが好きなことは、一番仲のいい優花ちゃんも知らない秘密。


 「ばっ!んなわけないだろ!」


 そんなに否定しなくても…。


 叶くん…、そんなに私のことが嫌いなのかな…?


 ちょっとショックだな…。


 「相田、そっかぁ、あんた…。」


 「あぁーーーーーー-っ。」


 優花ちゃんの言葉を掻き消すように、叶くんが叫んだ。


 何なんだろう…?


 「ねぇ、何の話?」


 「水夏理、相田ね、水夏理のことが…。」


 「あぁーーーーーー-っ。」


 また叶くんに掻き消された…。


 でも、優花ちゃんの言いたいことは分かったよ…。


 『水夏理のことが…。』

 

 









 大っ嫌い…!
 

 
 

 





 …でしょう…?
 
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