君の見る空は青くない。

 


  *side水夏理*.゚


 「水夏理-っ、行くよ~!」


 「はぁーい…。」



 叶くんがいない登校日。


 昨日は夜通し泣いて、ちゃんと眠れなかった。


 重くて腫れた顔を洗って家を出る。



 -ガチャ。



 嘘…。



 家の目の前に立っていたのは、叶くんだった。



 またドアを開けて家に入る。



 「あら、水夏理…?どうしたの?」


 
 「お母さん…、ふうっ…。」



 我慢できなくなって、涙が出る。


 「今日はとりあえず休んでいいから、リビングにおいで。」
 


 叶くん…、何かいいたげだったな。



 叶…くん…、会いたいよ…。



 どうしてこんなにも会いたくなるんだろう。



 どうして会って、抱きしめたいって思ってしまうんだろう。



 世界は、残酷だ…。






 -ピンポーン。



 チャイムの音で目が覚める。


 5時か…。



 私はソファの上で寝ていた。



 隣のテーブルには、ラップがかかった、切ったりんごと、置き手紙がおいてあった。



 『仕事に行ってきます。起きたらりんご食べてね。』


 お母さんの字だ…。


 お母さんの優しい思いに、また涙が出そうになる。



 -ピンポーン。



 あ、チャイムが鳴ってたんだ。


 パーカーを羽織って玄関に向かう。


 -ガチャ。 



 「どなたです…か…。」 



 ドアの前にいたのは-、



 「叶…くん…。」



 また涙が出そうになって、ドアを閉める。



 「待てよ。」


 ドアを閉めるのを止められる。


 叶くん…、やっぱり、男の子って力強いっ…。



 「な、なに?」


 
 -ギュッ。



 「…へっ?」



 あまりにもいきなりのことに、声が裏返る。


 叶くんが…、私を抱きしめてる…?


 「水夏理、ごめん。」



 「きょ、きょ、きょ、叶くん!?」


 
 ギュッと抱きしめる力が強くなる。



 「こ、ここじゃなんだから、ね…?家入ろう?」


 「…うん。」


 叶くん、急にどうしたのっっ?


 心臓が止まっちゃうよぉっ!



 「ムギチャ、ドウゾ…。」 


 ギョウッグンガワタシヲダギジメタ……。


 ぎこちない動きだと、自分でも分かるほど私はぎこちない。


 「水夏理。」 


 「へぇいっっっ?」


 また変な声が出る。


 「ふふっ、水夏理おもしろっ。」


 「ちょ、叶くん!?」


 笑うなんてひどいっ!


 全部、叶くんのせいなんだからねっ!



 「もぅっ!」


 「ふふっ、いつも通りの水夏理だ。」


 あ、本当だ…。


 「もぅっ!叶くんのバカっ!きゃ?」

 
 叶くんに一発おみまいしてやる!!
 
 

 そう思って叶くんに殴ろうとした。

 
 けど…。

 
 -バっ…。


 えっ…?


 叶くんが、私の上に…?


 「あらら~、水夏理ちゃん大胆だねぇ。」


 -かぁぁっ。

 
 ばっ、と赤くなった顔を手で覆う。


 ひどいっ!


 「叶くんのばっ…、んっ…。」


 口がふさがれる。


 私…、叶くんに、キスされてる…?


 チュッ、とリップ音をたてて、口が離れる。
 

 「…っ…ぷはぁっ…。」


 新しい空気を求めて、息を吸う。


 叶くん……、私のこと、嫌いなんじゃないの…?


 
 叶くんの気持ち、全然わかんないよっ…!



 「水夏理、俺、水夏理のことが好きだ。」


 
 えっ…!?


 
 「じ、じゃあ、なんで優花ちゃんの言ってたこと、あんなふうに否定したの…?」

 
 
 一番聞きたかったことを口に出す。


 
 「お前さぁ、恋愛に疎いんだよっ!」


 
 「なっ!」


 何それっ!ひどいよっ!



 「水夏理、俺の彼女になってよ。」


 え…?


 嬉しいっ///。


 けど…、



 




 「ごめ…ん。」


 私は、叶くんのことを、幸せにできないから。

 
 私は障害者だから。




 

 「そっか…。聞いてくれてありがとう。」


 叶くん…ごめんね。


 「じゃあ、水夏理が俺のこと好きになるまで、待ってるから。」


 え…?


 「てか、絶対好きにさせるから。覚悟してて。」


 えぇぇええっっ!!!!


 「ちょ、待っ…、」


 そういうことじゃ…っ!

 

 「じゃあ、明日、また迎えに来るから。じゃあな。」


 

 -バタン。


 

 

 嘘…でしょう…?



 明日から私、どうなっちゃうのぉっ!?????

 

 



 


 



 



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