私と君と夢物語。
第1章

バレンタイン




 2月14日。バレンタイン。また今日も会いに行く。

中学受験をした私達。友達の楓の彼氏は中学受験しなければ行くはずだった地元の中学校の同級生。

所詮私は付き添い。楓の彼氏の大貴だけでなく、大貴に付いて来る翔磨と将人もそう思っているだろう。



翔磨、私の気持ちなんて分かりもしないでしょ?



「楓、一人じゃ行けないの?」

私は気怠そうに前の席の楓の背中に触れる。

「莉桜いいじゃん、翔磨にも会えるよ?」

確かに会えるのは嬉しい。でも、告白したくなっちゃうほどでもない。

楓は大貴に渡すチョコを学校に持ってきていつも以上に高いテンションで絡んでくる。


あぁ、喋りかけるんじゃなかった。

「喜んでくれるかな?」「嫌いじゃないかなチョコ。」「早く会いたいー!」

仮にも今は授業中。教室を見回せば机に顔を伏せて寝てる奴もいたり、欠伸をしながら必死にペンを動かす人も。


楓は私の方を向いてひたすら放課後のことを語っている。

私は大きく欠伸をした。5限目はやっぱり眠い。暖房の風が心地よく当たって睡魔を誘う。

結露で曇った窓の外では3組の人達が体育の授業中だろう。3組の体育の担当の先生の大きな声が聞こえる。


もう一つ欠伸をした。涙目になる。

「ねぇ莉桜聞いてる?」「あー、聞いてる聞いてる。」「なにその棒読み感」


眠かった古典の授業の終わりのチャイムがなる。

伸びをしたり、欠伸をしたり、本当にこのクラスは緩い。



10分休憩も楓の話をひたすら聞かされトイレにもいけなかった。


 6限目は苦手な社会。この授業はもっぱら眠い。でも先生が怖すぎて皆寝れない。

頑張ろうとするけどどうしても先生の声は子守歌に聞こえる。時々意識が飛びそうになりながらも必死に板書を写す。

ノートの字も先生の声も視界もだんだんと遠くなる。



「莉桜?大丈夫?」


楓の声ではっと気がついた。眠気もだいぶ飛んだ。

「う、うん。眠い。」

眠い目をこする。人差し指に僅かに涙が残る。

ここで楓に声をかけてもらえてなかったら先生に起こされるという処刑に犯されていたかもしれない。


「白目むいてたよ。」


真顔でそんなこと言うもんだから笑ってしまいそうになる。

真顔でそんなこと言ったかと思うとすぐにくるりと体を前に向けた。私はそこで正気になる。



嘘でしょ!?私が白目を!?楓に見えていたということはクラス皆に見えていたと、なんて恐ろしい!

意識が飛んでいたところの板書を素早く書き写す。

あと少し、今日はいつにも増して板書量が多い。手が痛い。


終わりのチャイムが鳴った。「終わった~」と皆は安堵の声を漏らす。

「あー!あとちょっとだね!」

相変わらずのテンションで楓は私に絡んでくる。

HRを終え私は楓に黙って帰ろうとした。

そんな甘い作戦上手くいくわけもなく、呆気なく楓に捕まった。



「うわー!」少し嫌がる私を半ば強引にいつもの集合場所に連れて行く。

初めの頃は駅だったが人様に迷惑をかけてしまい学校に酷く怒られ今は駅の近くの店の裏になっている。






 翔磨や大貴、将人に会いたくない訳じゃない。少し前にも会ってるし恥ずかしいわけでもない。嫌いな訳でもない。

 どちらかと言えば翔磨のことは好き。友達としても、もう一つの意味でも、

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