麻布十番の妖遊戯
 話を聞いているうちに昭子と太郎の顔にも、こいつは面白い奴だという字が浮かび上がって見えるほどに興味をそそられていた。
 丁度新しいことをしたかったし、ちょいとこいつの話に乗ってみようか。
 といった風に話をまとめたのであった。

 それじゃあ、この世に彷徨っている霊を助けてやるってのはどうだろう。
 俺は長い間旅をしてきてそういう彷徨える霊をたくさん見てきた。この世にとどまってるのがたっくさんいる。

 という、霊助けの案を口からのでまかせに言ったのが引き金となり、それじゃあこの懐かしの三叉路に家を構えて夜になったらここに集まって三人で仕事と決め込もうじゃないかととんとんと話がまとまったのであった。
 もちろん侍は家なんて建てられない。なので、

「俺の実家がここにあってな、それはそれは大店で誰もが知っている店だった。俺の家はここいらでは知らない奴がいないほどだったんだぜい。俺はそこの息子だった。今は店は見ての通り無くなっちまってまっさらだけどな。できりゃあここに家が欲しい」

 と、己の実家の自慢を始め、己の希望を述べたのだ。

 そうかい、だったらここに我らの家を置こうじゃあないか。そこを拠点にその面白そうなことをしよう。毎夜、闇夜に紛れて集まろうじゃないか。
 太郎の一言で話がまとまった。

 
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