麻布十番の妖遊戯

 八

 こたつに入った三人はちょうどいい温さに頬を緩ませていた。
 昭子の前には酒のグラス、侍の前にはメロンソーダ、太郎の前にはこんぶ茶が。
 ほのぼのとした空気の中、メロンソーダを一気に飲み干した侍が昭子に、

「そういや昭子さん、たまこちゃんは最後の最後に昭子さんがなんなのかわかってよかったですね。でももっと早くわかってりゃ昭子さんがいままでにどんなひでえことをしたのか話してもらえたってのに、残念でしたね。ああ、そんな、俺が言うわけないじゃないですか。そんなことしやしませんよ」

「おや、珍しい。終わったことなんて無かったも同じなのに、今更そんなことを言うなんて、侍はたまちゃんのことを本当に気に入っていたんだねえ」

 目を細めて昭子が侍を茶化す。

「違いますけどね。気に入ってなんていませんわ。でも、あんだけ妖怪にこだわってたから」

「ふん。素直じゃないねえ。いくらこどもだからっていってもあの子は殺されてから今までにけっこうな年月が経ってんだよ、その間あたしらとここにいていろいろ見聞きしてきてるんだから、中身はいい大人ってもんさ。それにね、女同士なんだから、言わなくてもわかるってもんなんだよ。前も言ったろ。あたしのこの雪みたいに真っ白な肌と綺麗さと冷たさは一つしかないじゃないか。それをたまちゃんはちゃんとわかってたのさ」

 女同士は何でもわかるもんなんだよと侍を子供扱いする。

「何言ってんだよ。こたつに入る雪女なんて聞いたことねえよ。溶けてなくなったりしないのかい?」

 侍が負けじと昭子に応酬する。
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