麻布十番の妖遊戯
 そんなやりとりを何度か続けるうちに、自分もそこで暮らしてみたいと思うようになっていった。

 そんな気持ちになっていったのは、大親友だった愛子が結婚するという連絡を受けたからなのかもしれない。

 そうこうしている間に週末に茨城県まで遊びに行くようになり、畑仕事を手伝ったりしているうちに、この素朴な生活も自分には合っているかもしれないと確信するようになった。

 司も優しい人だし、いつも瑞香を気にかけてくれる。
 何より、自分で植物を育てて収穫するという田舎の生活に生きがいを見つけられるかもしれないと思ったのだ。

 それからというもの、事はとんとん拍子に進み、まずは婚約という形を取り不動産会社を寿退社、茨城に引っ越し、司と一緒に生活をするようになった。

 そこから瑞香の悪夢は始まったのである。
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