麻布十番の妖遊戯
「それじゃあ、侍さんがどうしてメロンソーダが好きな侍さんになったのか、死んだのになんで成仏しなかったのかを教えてください」

 玉子がえんぴつの先をまた舐めて、書く体勢を整えた。

「言い方にしっくりこねえがここは一つ我慢しちゃるか。面倒くせえが、それがお前との約束の一つだしな。少しだけだったら教えてやってもいいぞ。というよりだな、ここに長く居すぎて昔のことは朧げなところもあんのよ。だから、そういうところは端折るからな。それでいいな」

 たまこは大きく頷いた。
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