失翼の天使―wing lost the angel―
「ちょっと、相談だ。君を医者として見込んでの;;」



「……そちらの第2診察室にどうぞ;;」



警戒する私に気付いたのか、鞄から検査画像が入った封筒を取り出した隆寬さん。

まだ心はざわついてるものの、第2診察室へと促した。

1人は嫌で、大人しく立ってた友田君を手招きして裏側から入ると、先程の会話には触れずに封筒を差し出して来た。

「拝見します」と受け取れば、名前の欄には隆寬さんのイニシャルが記入されて居た。

取り出せばCT画像。

蛍光灯の光に翳して見るなり、私の手からすり抜けて行った。



「……誰の、ですか」



「僕だ。肺癌のステージ4で間違いないと思うか?」



「ちょっ……ちょっと、待って下さいよ……;;」



「誰にも言わず、出来る限りまで医師と有り続けたい。だが、どうにも自分は大丈夫だと思ってしまって。死期が見えず、引き際がわからない」



「……ご自分で、何を言ってるかわかってます?私に……元カノに、何で……??」



前に付き合い、好きだった男の死期を診断するなんて、出来る事じゃない。

私はそんなに強い女じゃない。



「じゃあ、君のお兄さんたちと話してくれ。ここで待たせて貰うから」



そう言うと、咳をしながら診療台へと腰を下ろした隆寬さん。

友田君がティッシュを差し出すと、「すまない」と数枚を抜き出した。
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