失翼の天使―wing lost the angel―
「ゆ、優海――ッ!!?」



気付いた時には、足が勝手に動いて居た。

搬入口から外へと飛び出し、職員駐車場を抜けて鷺沼家へと走る。

ユニフォームのままだけど、そんなの関係なく賴真に会いたくなってしまった。



「どうした?――うぉっ!!?;;」



「私……、その……!;;」



…やらかした……;;

家から出て来た賴真に、無意識に抱き着いてしまった。

勢いでこんな事……どうしたら良いのか。

でも、嬉しさは大きく。

これ以上ないほどなのは本音。



「……私、いつか島の診療所にいきたい!」



「え……?」



「同じ夢。2人の夢、叶えたいっ」



「何で知って……;;」



「食い付くとこ、そこ?」



「いや……嬉しいんだけど、驚いて、つい……;;」



「運命なのかな、私たち……」



「必然だな。人と人との出会いは、一つ一つが運命なんだ。つまり、元彼も。同じとか断る!」



…そこで、隆寬さんが出て来るんだ;;

気持ちはないとわかってる筈だけど、これでこそ賴真と言えばそうだ。

自分の中で、何かがストンと落ちた気がした。

賴真に言えずにいた夢からの解放もあるだろうけど、それだけではない。

単純なのかも知れないけど、また私は彼に恋に落ちたんだろう。
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