お見合い相手はエリート同期

「いや。そこまでは……。
　操を立てる気はあるんだな。」

　声色まで優しい気がしてますます戸惑ってしまう。

「別に……そういうわけじゃ。」

「そういうことにしとけよ。
　その方が俺も気分がいい。」

　だって岡本課長に誘われて気持ちが揺れたのは確かで、断った理由に純粋な気持ちはこれっぽっちも無い。

　ただ打算的に澤口となら恋愛を飛び越えて結婚が出来る相手だから。
　岡本課長とだとイチから恋愛をして……そもそもが間違った相手だったのだけど。

　そういう心配をしなくていいのは、とても気持ちが軽い。

　この際、澤口と同じ会社なのは目をつぶってもいいかもしれない。
　公言しないも何も見合いなのだからすぐ結婚するわけで、結婚すれば隠すこともない。