お見合い相手はエリート同期

「ん……。」

 くすぐったさを感じて目を開けた。

「あぁ。悪い。起こした?
 付けたまま寝て低温やけどしたらマズイ。」

 シートは外されて、髪を撫でるように耳にかけられた。

「まだ寝ればいいよ。」

 近くで聞こえた穏やかな声に導かれるように再び眠ってしまった。
 温もりが心地よくてまだ起きたくない真冬の布団の中のようだった。


 手を伸ばして、毛布をたぐり寄せ……。

「苦しいからそろそろ離してくれない?」

 怪訝な声に目を覚ますと毛布だと思っていたのは澤口で、あろうことか澤口に思いっきり抱きついて寝ていた。

「ご、ごめん。」

「よだれ。垂らして寝てた。」

「ヤダ!嘘!」

「うん。嘘。」

「もう!」

 澤口の肩ごと押して文句とともに安心できる距離を確保する。
 目を開けて至近距離にいるとか、心臓に悪い。

 体からハラリと落ちたジャケットに気付いて、澤口とジャケットを見比べた。

「ごめん。ヤダ。私にかけたりしたら澤口が寒かったんじゃない?」

「いや。誰かさんが引っ付いてきたから暑いくらいだった。」

「………ッ。
 それはどうもすみませんでしたね。」

「起きてる時も寝言くらい可愛げがあればいいのにな。」

「……どうせまた嘘とか言うんでしょ?」

「さぁ。それはどうかな。」

 んーっと伸びをした澤口が「もう帰ろう」と立ち上がった。
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