パクチーの王様

 しかし、まあ、人の家の話なら、こうして冷静に聞けるのだが。

 自分の家のこととなると、自分も、もう~と思うことが多いのも確かだ。

「芽以を挨拶に来させないのも、式をやらないのも当てつけか、とか言いやがった。

 式をやらないなんて言ってないだろ」
とまるで今、目の前に両親が居て、文句を言っているかのように語り出す逸人に、

 ……あ、やるんだ? と芽以は苦笑いしながら思っていた。

 あのー、私もそれ、聞いてませんでしたけど。
 私の式なのに……。

「あっちはあっちで、跡継ぎの結婚で、てんてこまいなんだから、こっちのことは、ほっといてくれればいいのに」

 そう言う逸人に、芽以は謝った。

「すみません。
 私、忙しくて、おばさまたちにご挨拶に行くの、忘れてました」

 だが、逸人は、
「行かなくていい、挨拶になんか」
と、つっけんどんに言ってくる。
< 106 / 555 >

この作品をシェア

pagetop