パクチーの王様
「圭太は優しいからね。
 なんだかんだで、自己犠牲の人よ。

 あんたは譲らないわよねえ。
 結局、芽以を手に入れた」

 いや……なにも手に入ってない、と思う。

 芽以の心は自分を向いてはいないし。

 一緒に住んでいても、そんな芽以に手を出すことさえ出来ずに居る。

「俺が奪ったわけじゃない。
 圭太が俺に押し付けたんだろ?」

「これ幸いともらったじゃない。
 なんで、頑張って、圭太の許へ行けと背中を押してやらなかったの?

 芽以の方から押してたら、圭太は折れてたわよ」

 そんなこと、わかってたでしょう? と砂羽は言うが。

 いや、まったく言わなかったわけじゃないし。

 芽以との結婚を迷わなかったわけでもない。

 だから、圭太に言われ、芽以に電話をかけたとき、すぐに来いと言った。
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