パクチーの王様



 翌朝も逸人の店は通常どおり営業していた。

「ランチBですー」
とお客様に向けた笑顔のまま、芽以は逸人に言いながらも、内心、のたうち回っていた。

 目が覚めたら、逸人が居なくなっていたからだ。

 もう起きたのかと思ったら、厨房にはおらず、何故か芽以の部屋で寝ていた。

 しかも、珍しく遅く起きてきて、
「すまん。
 なかなか寝付けなくて」
とだけ言う逸人は、何故、部屋を移動したのかは教えてくれなかった。

 ……なんだろう。
 恐ろしい予感がするんだが、と芽以は逸人を窺う。

 私が夜中に蹴ったとかっ?

 イビキがひどかったとかっ?

 突然、立ち上がり、ウロウロし始めたとかっ?

 更にそこから、ブツブツ言いながら、泣き出したとかっ!

 どんどん妄想が膨らんだとき、
「あけましておめでとー」
「おめでとうございますー」
と陽気な声がした。

 振り向くと、千佳たちが立っていた。
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